はたおり日記


文字の形が持つ魅力

日常の中に使われる文字は、多種多様でその用途に合わせた”文字の形”を持ち、それぞれに生き生きとした表現をしています。

話し言葉と同様、文字や漢字は、古来より文化の発展に重要な役割を果たしてきました。そして、時代背景の影響を受けて、文字の形も様々に進化しながらも力強く私たちに訴えかけているようです。又、その中で消えていく文字があることも忘れてはならない事象です。それでは文字の形態について少し触れてみたいと思います。

「三朝書」

中国湖南省江永県の周辺に女性だけが使う「三朝書」の「女文字」があることを知ったのは3年前、テレビで放映されていた海抜2000メートルほどの都龍山と、1800メートルの九嶷山の美しい山々の風景が目に入りました。日本から現地の村々を調査される遠藤織枝先生と調査隊の番組でした。

緑豊かな農村地帯は、揚子江のはるか上流にあたり気候は温暖で、この地は男性だけの働きで暮らしていけたようで、女性は糸繰り、糸紡ぎ、機織り、刺繍、布鞋つくりなどをして、話し合ったり、技術を伝えあう「文化的」な時を過ごす村であった。

この地に女性に関する風習が「結交姉妹・結拝姐妹」と女性同士の結びつきがあり、仲の良い友達と義理の姉妹関係を築き上げ、結婚を機に別離する。その悲しさを「女文字」に記して、嫁いでから3日目に送るのが「三朝書」である。

女性文字を「女書」と呼び、漢字を「男書」と呼ぶ。2種類の文字が共存していた。女性も漢字を学べるようになり、今では「女書」が衰退に追い込まれているのが現実のようです。歴史の中には残らないごく限られた地域の文字は、庶民の中から生まれ、伝わり人々の心を豊かにしていた「三朝書」は、現在では読む、書くことができる人がどんどんいなくなり、消えていく女文字として惜しまれています。参考資料(消えゆく文字 中国女文字の世界)著者遠藤織枝✙黄雪貞」編著

【あしたづ第16号平成26年2月発行より】